プラスチック汚染に関する調査・研究への協力

  北海道大学大学院水産科学院において、御蔵島のオオミズナギドリの胃袋および砂嚢を分析していただきました。当店スタッフが御蔵島のオオミズナギドリを守りたい有志の会の活動として、分析の対象となるサンプル(胃袋および砂嚢)をオオミズナギドリの遺骸から採取し提供する、という形で協力させていただきました。その結果、かなりの個体からプラスチックが検出されました。

◆きっかけ

当会のメンバー自身は2人ともダイバー、ドルフィンスイマーでもあり、以前から海洋ゴミ問題、マイクロプラスチック問題に関心を持っていました。その中で、海鳥は特にマイクロプラスチックが検出されたり、プラスチックの誤飲があったり・・・といった事例を耳にするにつれ、御蔵島のオオミズナギドリは大丈夫なんだろうか・・・という思いがありました。

一方で、私たちはオオミズナギドリの巣立ち時期のレスキュー活動を行なっていますが、止むを得ずまだまだ亡くなってしまう命もあります。オオミズナギドリの場合、約2ヶ月半巣穴で暮らしていてまだ外の世界を知らないヒナが、様々な困難により巣立ち途中に事故で命を落とすケースがあるのです。その命もなんとか無駄にせずにできないか・・・その思いとマイクロプラスチック問題がつながり、巣立ち途中の事故で亡くなったヒナから胃袋と砂嚢を採取し、研究機関に送ってプラスチックが入っていないか分析してもらうということを思いつきました。(オオミズナギドリの親鳥は、自分が捕獲した餌を胃袋から吐き出してヒナに与えるため、親鳥がプラスチックを飲み込んでいればヒナの胃袋や砂嚢もプラスチックに汚染されてしまいます。)

その後、今年3月に東京大学柏キャンパスで開催された「海鳥研究集会」でお会いしたミズナギドリ研究の第一人者である綿貫豊先生(北海道大学大学院水産学院教授)にこの計画をお話したところ、「やりましょう」という大変ありがたいお返事をいただくことができました。ハシボソミズナギドリなど他のミズナギドリ類については既にプラスチックの調査が行われていましたが、オオミズナギドリについてはまだちゃんとした調査が行われていなかったのだそうです。

(下記写真は、レスキュー活動時のものです)

◆結果

ボランティア獣医師さんに胃袋や砂嚢の採取方法を教えていただき、2019年11月に合計で25羽分のサンプルを採取しました。今年は出鳥の時期が遅かったのか数が減っているのか正確なところは分かりませんが、観察期間中は幸いではあるのですが亡くなる鳥の数は少なく、そんな中でも島の方のご協力もいただきながら、なんとか数を集めることができました。

そのサンプルを北海道大学にて分析していただいたところ、かなりの数の個体からプラスチック繊維が発見されました。

 

写真:オオミズナギドリの中から実際に採取されたプラスチック繊維

◆まとめ

私たちにとって身近な御蔵島のオオミズナギドリからも高い割合でプラスチックが検出されたことに衝撃を受けながらも、「やはりそうだったんだ・・・」という思いもあります。海洋のプラスチック汚染は、私たちが愛する御蔵島の自然にも深刻な影を落としていたのです。

この問題を多くの方に知っていただき、私たち1人1人が自分たちの暮らしを見直していくと共に、社会全体を動かすきっかけとなればと考えています。

 

※今回の分析において、下記の皆様に大変お世話になりました。心よりお礼申し上げます。

分析・写真:北海道大学大学院水産科学院 大学院学生 ナヤ・ゴメス様

指導教員:北海道大学大学院水産科学院 綿貫豊教授

採取方法指導:葉山久世先生(獣医師)