もっと知りたい!オオミズナギドリのこと

魅力的で不思議なオオミズナギドリのことをもっと知りたい方のためのページです。

(2017年11月23日更新)

 

オオミズナギドリって、どんな鳥?

知れば知るほど奥深い、オオミズナギドリ。ここでは、そんなオオミズナギドリについてご紹介をしていきます。


◆見た目は?

オオミズナギドリは、体長約49センチ前後。大きな翼を持っていて、広げると約120センチになります。カモメやウミネコに似ていますが、飛んでいる時には翼が細長く見えます。体や翼の上面は灰色がかったこげ茶色、頭は白とこげ茶の斑点模様。足はピンク色です。メスよりオスの方が体やくちばしがやや大きいですが、それ以外に見た目の違いはありません。

 

◆どこにいるの?

春から夏にかけては東アジアを中心とした60余りの島に生息していて、地面に巣穴を掘り繁殖を行います。繁殖地の多くは日本にあり、御蔵島以外は全て無人島。その中でも、御蔵島は世界最大の営巣地なのです。日本では、6か所の繁殖地が天然記念物に指定されています。
秋から冬にかけてはパプアニューギニアやフィリピンなどの暖かい地域に移動し、海の上で生活をします。オオミズナギドリは夏と冬で過ごす場所を変える、いわゆる「渡り」を行う鳥なのです。その為非常に長距離を移動することができ、1日で約1,000km、渡りの際には5日間で約3,500kmを移動することが確認されています。

 

◆御蔵島では、どうやって過ごしているの?

御蔵島には、毎年2月末頃から4月にかけて来島。森に約1mの深さの巣穴を掘ってつがいで暮らし、巣の中で繁殖を行います。卵を産むまで、オスは比較的頻繁に巣へ戻りますがメスは3日に1回程度、産卵直前には2週間以上巣に戻らずに海で栄養を蓄えます。
メスは6月下旬頃に毎年1つ卵を産み、卵は8月中旬頃に孵化。孵化後、オスメスは約1週間ごとに順番で卵やヒナを守ります。もう一方の親は主に海で過ごして餌を捕り、夜は地面を掘って作った巣穴に戻ってヒナに餌を与えます。親鳥は10月後半、ヒナは11月に旅立っていきます。

 

◆どこで、何を食べているの?

オオミズナギドリは肉食で、魚類や軟体動物(イカなど)を食べています。カタクチイワシが特に好物で、泳ぎながら水中の獲物を確認し、水中に潜って魚を捕まえます。御蔵島近海でも、6m以上潜水する姿が確認されています。捕まえた魚は巣穴にいるヒナの所に運び、口移しで与えます。
夏に卵が孵るまではより栄養豊富な餌を求めて、水温が低い北方域へ遠征。時には三陸沖や北海道沖まで移動し、約7日間巣に戻りません。その間そのペアは餌を得ることができず、絶食状態となります。
地球温暖化により水温が上昇するとより遠方まで餌を捕りに行く必要が出てくる可能性があり、両方の個体に負担がかかることが心配されています。

 

◆どんな特徴があるの?

海では大きな翼で風を切るように飛翔し、水中にも潜る事ができます。また、地上では崖や樹木を登ることができますが、着地したり飛び立ったりする事は得意ではありません。着陸する時には狙った所へ静かに下りることができず、木の枝などをクッションに利用しますが、時には勢いよくぶつかってしまったり、巣から離れたところに下りてしまったりすることがあります。また、飛び立つときには地表からスムースに飛び立てない為、斜面を使って助走したり、高台や木の上から落ちるようにして飛び立ちます。
オオミズナギドリは遠方まで渡りを行う為、筋肉や脂肪を落として体をより軽くすることで、遠くまで飛べるように進化したと考えられています。その為に陸上での行動が苦手なのです。特に御蔵島のオオミズナギドリは他の地域のオオミズナギドリよりも、脂肪や筋肉が少なく全体的に軽量であることが分かっており、三陸や北海道など遠方へ餌を捕りに行っているためと考えられています。
陸上生活が苦手なオオミズナギドリにとって、かつて哺乳類のいなかった御蔵島は、営巣地としてとても適していた場所だったのかもしれません。

 

◆どんな声で鳴くの?

オスは甲高い「ピーウィ」、メスは低い「グワー」というような鳴き声です。夜になり片親が海から森へ帰ってくる頃、オスメス同士が鳴き交わすことで巣穴の位置を確認すると言われています。夜の森はオオミズナギドリの声であふれ、明け方前にはピタリと鳴き止みます。

 

◆どうやって出会えるの?

日中、片親は海上に過ごしている為、海の上で休んだり、風を切るように飛んだりしています。ドルフィンスイム船上や東海汽船上から沖合を見ると、優雅に空を飛ぶ姿を見る事ができます。ヒナともう片方の親は巣穴の中にいる為に観察することができませんが、地面に掘られた巣穴や羽、8月頃には孵化した後の卵の殻などを森で目にすることができます。
また、夜になると海にいた親が森へ戻ってきます。その為、オスメスが鳴き交わす声を聞いたり、地面に下りてから巣穴へ戻るまでの姿を観察したりすることができます。
※観察の際には地元ガイドの方と同行し、ルールやマナーを守りましょう。

 

 

オオミズナギドリにとっての脅威

オオミズナギドリの天敵は、実はネコだけではありません。便利な暮らしの裏で、生きもの達が様々な影響を受けています。とはいえ、便利な生活を失うことは難しいのも事実です。私達は船や桟橋、道路を使わなければ島にもたどり着けませんし、電気が無ければこうやって情報を発信することもできません。でも、私達の暮らしが自然界に影響を与えていることは忘れずにいたい、と私達は考えています。

◆カラス

オオミズナギドリの第2の天敵が、カラスです。
カラスは日中の明るい時間帯にのみ活動しますので、昼間海にいるオオミズナギドリは夕方になると群れになって日が沈むのを待ち、暗くなってから森の巣穴へと帰ってきます。そして明け方近くなると、暗くなる前にまた海へ向かいます。夜暗くなると森はオオミズナギドリの声で溢れ、夜が明ける頃にはその声がピタッと鳴きやみます。ですが、様々な理由で明け方までに海へ行く事ができなかった場合には、カラスに狙われてしまいます。

カラスは自力で島に渡ってきているだけでなく、島と島を往来する船と一緒に移動してきている可能性も示唆されています。

◆街のあかり

オオミズナギドリは、明るい所に向かって行く習性があります。その為、夜の森と海を往来する間に明るい場所があると、そこに迷い込んでしまいます。成鳥になるにつれてオオミズナギドリも学習し、迷い込むことも少なくなっていきますが、人口の光を知らないヒナは街のあかりに惑わされ、なかなか海にたどり着けずにネコやカラスに狙われてしまいます。また、窓ガラスや電灯に向かってオオミズナギドリがぶつかってしまうケースもあります。

★お願い★10月下旬~11月下旬は不要なあかりを消しましょう

8月に誕生したオオミズナギドリのヒナは、10月下旬~11月下旬にかけて、御蔵島の森から南半球へと旅立ちます。彼らは夜になると海に向かいますが、暗い中で光に向かって行く習性があり、里の光によって方向を間違ってしまったり、窓に突っ込んでしまったりすることがあります。不要な照明は消し、窓にカーテンやブラインドがある場合はしっかり閉めて、なるべく光を少なくしてあげましょう。また、どうぞ早めの消灯にご協力ください。

ダウンロード
※私たちは、御蔵島の宿の皆さまに、下記のチラシの掲示をご依頼しています。ご興味のある方は、下記からダウンロードをお願いいたします。
【チラシ】10月下旬~11月下旬は不要なあかりを消しましょう_御蔵島.pdf
PDFファイル 218.0 KB

◆落石防止フェンス

断崖絶壁に囲まれた御蔵島。島の東側には都道、西側には村道が走っていますが、都道には落石防止フェンスが設けられています。安全の為に重要な役割を果たしているフェンスですが、岸壁とフェンスの隙間にオオミズナギドリが挟まってしまい、出られなくなるという事故が多く発生しています。
特に新しいフェンスが設置されると、まだその場所を学習していないオオミズナギドリ達が多数被害に遭ってしまいます。また、まだ人工物を知らないヒナが巣立つ際も同様です。

 

◆狭いスペース

道路の側溝、建物と建物の間など、狭い隙間にたまたま入ってしまい、すぐに出られなくなるといったケースが発生しています。特に道路の側溝は、オカダトカゲやミクラミヤマクワガタなどの小動物にとっても、大きな脅威となっています。

 

◆広いスペース

道路や桟橋などの広いスペースはオオミズナギドリの隠れ場所が少なく、人口の光で迷い込んでしまった時に、隠れる場所がありません。人口の光に惑わされて道路や桟橋の広場に迷い込み、明け方になると隠れる場所が無くカラスに狙われてしまう・・・といった事が起きています。

 

◆私達にできることは・・・?

①明るい時間帯に道路や桟橋などにいるオオミズナギドリを見かけたら、海へ放してあげましょう。海へ出れば、カラスやネコに襲われる事はありません。時間的、技術的に難しい場合は、草むらの陰に移動させるなど目立たないようにします。(オオミズナギドリに触れる場合は軍手などで手を保護し、不慣れな場合は詳しい方に声をかけましょう。各自の責任にてご活動下さい。)
 
②滞在中は、宿にカーテンやブラインドがあればしっかり閉めて外に光を漏らさない、早めに消灯するなどにぜひご協力下さい。(特にヒナの巣立ちの時期:10月下旬~11月下旬) 

 

③通常オオミズナギドリが活動している区域で落石防止フェンスがあるのは、里よりも少し上から大島分川付近までです。南郷や長滝山など東側の森へ行く際にはフェンスをぜひご確認いただき、もし挟まっているのを見つけたら出してあげましょう。 落石防止フェンスの多くは引っ張ると動きますので、下にスペースを作る事でオオミズナギドリが落下し、フェンスの外に出る事ができます。

 

④守る事の第一歩は、「知ること」「伝えること」から。まずは周りの人に、今起きていることを伝えることから始めてみませんか? また、もう少し何かできないかな・・・と思ったら、ぜひ私達と一緒に「それぞれができること」を探していきましょう!